34、女、フリーター。
1つ年上の同棲相手も定職なし。
6畳間と3畳キッチンのみのアパートで
的外れな倹約をしながらコンビニ食生活、
頭でっかちな理想を抱きつつ送る、痛々しいほど現実的な日常。
ある日、ケータイにかかってきた「テキ電」で出会った
ハタチの男の子にチャチな恋をした---。

結論から言うと、読んでよかった。
読もうと思った直感は当たってた。
一番興味を引かれたのは、この主人公が、バイトでお金を貯めて
料理人になるための専門学校に行きたいと話すハタチに、
「それなら私がそのお金を出してあげる」という提案をして
「俺をバカにしている」とひどく怒らせてしまう件。
作者はこの終盤の展開に対して、主人公のその後の気持ちを
直接的に事細かには描写していないのだけれど、
私は自分がこの主人公になったような気分を味わってしまった。

そんな提案を思いついた自分への嫌悪感。
そんな提案を実際に相手に伝えてしまったことへの嫌悪感。
相手のためを思っての考えだったはずなのに
結局はいつも自分のことしか考えていない自分自身への嫌悪感。
私も、何かしてあげたい、タイプだからすごくよくわかるわ。

この主人公は、自分よりいろんな意味で下(年だったり
人生経験だったり・・・)であるハタチに、彼がすぐには
用意できない金額を整えてあげることで、自分が上だという
証を示し、できることなら尊敬の混じった憧れの目で見られて
自分のどーしよーもない現実から
救われた気持ちになりたかったんじゃないのかな。
そう、だから、自分のため。

私も、彼女みたいに行動には移さなくても、
同じような「妄想」を抱くことがある。
読んでよかった、と思うのは、そういう想いが、
小説になるほど当たり前の感情なんだってことを
あらためて確認できたからなんだろうな。

必ずしも純粋に相手を想う恋愛ばかりするわけじゃない。
恋愛って、ほんとに自分を映す鏡。
相手に想って欲しい気持ちが強い私は、
誰かに常に認めてもらうことでしか自分に自信が持てないって
本質を、恋愛でさらけ出してるのかもしれない。

角田 光代 講談社文庫 2005/10 ¥420

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